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うちの部屋の三人が同じ本を読んだらどうなるだろう。そんな試みです。

第一回は俺が気の迷いで買ってしまった清涼院流水「秘密室ボン」

(2005/12/13 r/qからt/oに移動)

(2005/07/28 HDDからサルベージ)

清涼院流水「秘密室ボン」

清涼院流水「秘密室ボン」

清涼院流水

1974年兵庫県生まれ。2001年初頭京大中退。在学中の1996年「コズミック」(講談社ノベルズ)で第二回メフィスト賞を受賞。破天荒(人によっては馬鹿とも言う)さが大受けする。自分で自分の小説を「流水大説」と言う。今回取り上げた「秘密室ボン」は紀伊国屋新書売り上げ12/02-12/08において22位である。

ソース:紀伊国屋新書週刊売り上げ

裏表紙

ドイツ生まれの日本育ち──メフィストしょう
「密室の神様」を名乗る老人によって
突如とつじょ秘密室ひみっしつ」にとらわれてしまう。
90分で無くなる室内の酸素さんそ
そして仕かけられた「密室ボム」。
脱出する方法はただ1つ、
「密室YES.NOクイズ」に全問正解すること!
メフィスト翔は、たった90分で
秘密室を解く鍵=人生の必勝法を見つけられるか?

表紙見返し

この本を読むあなたと登場人物のカウントダウンが同時進行する、世界初(たぶん)!「リアルタイム・リーディングシステム」導入! エキストラ・ボーナス「歴代メフィスト賞作家あて謎謎も必見」

同居人1

同居人が(懲りずに)買ってきた清涼院流水「秘密室ボン」を読了。清涼院流水という人は凄いね。あんなにいろんな人に貶されて、賛同する作家もほとんどいないのに、芸風を変えずに我が道を走る様。そんなのでひたすら本を出し続けられるところ。偉い。

で、秘密室ですが。

以前よりは文章が読みやすくなったね。以前よりも文章を読んでいてむかつく度合いが減った。それでも文章のセンスは相変わらずなので斜め読みで読み飛ばしても作者への罪悪感がまったく起こらない。そういう文体だし。

ミステリという世界は、ミステリの要素がある程度あれば、文体とか人物描写とか物語とかが非常に拙くてもデビューできて、そこそこ売れて作家として活躍できたりする。法月綸太郎とか霧舎巧とかそんなんだろう。別にそれは嫌じゃない。流し読みするけど。

清涼院流水は「コズミック」は、まあ、文体その他はさておき趣向は面白かったと思う。その後はさておき。

で、秘密室ですが。メフィスト賞受賞作家全員に密室物のミステリを書かせるという、講談社ノベルスの密室本企画の一冊です。当然密室物です。デビュー作「コズミック」では一年に1200個の密室で1200人が殺されるという大トリックを繰り広げた流水先生です。そんじょそこらのツマラナイ密室物は書かないでしょう。と、裏切られるのがわかっていて期待したりする。

120ページを30分くらいで読み終える。

はあ。

脱力。

認識レベルで密室状況が解決される』という点では京極夏彦の「姑獲鳥の夏」と通じているかもしれない。しかし、こんなに脱力する形でそれをするか。

清涼院流水だからね、といえばこのひどさは簡単に説明がつくのだけどね。それにしてもひどい。いや、それでこそ流水だ。これぞ流水節。偉い。流水先生最高。

最近寒いしね。燃やす?

同居人2

主人公の名前が「メフィスト翔」…のっけからコレですか。

かの有名な流水先生の本を拝読するのはこの本で2回目。以前読んだ『秘密屋 赤』では、あまりのどんでん返らないぶりに衝撃を受けました。まさかそういう所に収束するはずが無いだろう、無いだろう……えー? てなもので。しかも収束場所がすごくくだらない。この本と対になる『白』はまだ手出しする気が起きません。

『秘密屋ボン』、こちらは主人公の名前を見た時点である程度覚悟が出来るので、秘密屋の方よりは親切設計なのかもしれません(流水を熟知している人なら買った時点で覚悟完了なのかな)。でも、それでも内容がアレなことには変わりが無い。翔が密室に閉じ込められている様を通じて密室という状況そのものを考察する、というコンセプト自体は悪くないと思うのですが、考察の進め方と導かれる結論、ならびに密室脱出法が全然よろしくないと思います。

そして問題は密室脱出後。主人公のアイデンティティに関わる、とある謎々が25題載ってるんですけど、どうしてわざわざこういう事を書くのでしょうか…一応謙遜する素振りは見せていますが、余程自分に自信があるのでしょうか…。普通は恥ずかしいよ。天然?

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燃やすぞ。

燃やした。

流石に何も書かないのは不味いので評を書く。

彼は書きたかったことを書ききったのだろうか。そもそも書きたかったことは、彼の伝えたかったことなのだろうか。甚だ疑問である。

彼──清涼院流水──は、技巧に走る気性である。テーマなぞどうでもよいのではないだろうか。

今回の作品では『この本を読むあなたと登場人物のカウントダウンが同時進行する、世界初(たぶん)!「リアルタイム・リーディングシステム」導入!』と謳っている。このネタは筒井康隆が「虚人たち」ですでに実行し、大きな成功を収めている。只の二番煎じに過ぎない。忠告してやれよ、編集者。「あなたの文章・文体では90分が30分になってしまいますよ」と。既に「筒井康隆が同様のことをしてますよ」と。

内容も薄っぺらで、文体も薄っぺらで。只消費されることだけを望んでいる。この点、多少は大塚英志に通じる所があるのかも知れないが、清涼院流水には大塚程の方法論が無い。要するに駄目な作家という訳だ。

閑話休題。この本ではメフィスト翔が秘密室に囚われる。そこで密室の神様とクイズでやりとりする。この過程に於いて、秘密室の謎をメフィスト翔は解かねばならない。すると解く過程が非常に重要な位置を占める。ここが一番の見せ場である筈だ。それなのに、この過程が一番詰まらない。いや、重箱の隅までこの本は詰まらないがその中でも本当に詰まらない。論理的な解法を魅せる訳でもなく、メフィスト翔の内面を描く訳でもない。ただ淡々と──清涼院本人としては非常に面白いのだろうが──クイズが続いていく。やっぱり駄目な本だ。

密室からの解放もやっぱり駄目だし、解法も駄目である。そんな訳で燃やした。

それでもJDCシリーズが出たら買ってしまうんだろうね。「流水大説は読むドラッグ」説に私は賛成である。おしまい。

クリックすると800*600に拡大可能。一個あたり100kB程度。

燃やす前燃やす前
燃え始め燃え始め
メラメラ燃えるメラメラ燃える
活字が綺麗僅かに覗く活字が綺麗である
燃え尽きた清涼院流水燃え尽きた清涼院流水